ICE-1 |
![]() |
![]() |
1989年から93年に渡って製作され、1991年6月2日のICE開業時から活躍しているのが、ICE-1である。ICE-1はドイツの技術の粋を集めて製作された。具体的には、先頭車がクルップ社(エッセン)、クラウス・マッファイ社(ミュンヘン)、ABBヘンシェル社(カッセル)、その電気部品関係がABB社(マンハイム)、AEG社(ベルリン)、ジーメンス社(エルランゲン)、中間車がデュワグ社(クレフェルト・ウェルディンゲン)、LHB社(ザルツギッター)、MAN社(ニュルンベルグ)、MBB社(ドナウベルト)、ABBヘンシェル車輌組合(ベルリン)によりそれぞれ製造された。このほか、空調や電気設備などの製造にもドイツの有名メーカーが携わっている。 ICE-1は両端に動力車を配し、その間に9〜12両の中間車を挟んだ編成をしており、全部で60編成が製造された。形式は、両端の動力車(電気機関車)が401形、1等客車が801形、2等客車が802形、2等サービス車が803形、食堂車が804形となっている。ICE-1各車は特に高速新線でトンネルが多いため、全車が気密構造となっている。各車両は特殊な機械式連結器によって結ばれ、工場でのみ切り離すことができる。塗装は白に濃淡2色の赤い帯が入った明るいもので、ドイツ鉄道の比較的地味なイメージを一新した(写真左上)。1998年からはVerkehrsrotと呼ばれる新塗装への移行が開始され、帯が明るい赤一色となって、前面に小さなDBマークが入った(写真右上)。 1998年6月にはエシェデ近郊に脱線転覆事故を起こし、死傷者が多数でる大惨事となった。この事故の直後には、全ての編成の運行が一旦中止された。検査終了とともに、ICE-1の編成は順次運用に復帰したが、事故の原因となった客車の車輪は全車交換することになった。この工事の関係で一時的にICE-1は客車8両の短縮編成で運行された。現在は車輪交換工事はほぼ終了しており、もとの長さの編成で運行されている。 ICE-1は全車がハンブルク第1機関区に配置されており、ハンブルク・アイデルシュテット車両区をベースとしている。通常は、ハンブルク―ミュンヘン、ベルリン―ミュンヘン、ベルリン―バーゼルSBBを結ぶ列車などに使用されるが、一部はオーストリアのウィーンやスイスのチューリッヒ、インターラーケンなどに乗り入れる。1999年5月末のダイヤ改正からは、ベルリン―デュッセルドルフ―フランクフルト空港―ミュンヘン間の列車にも投入され、ライン川左岸線を定間隔で走るようになった。 |
401形 (001-020 / 051-090 / 501-520 / 551-590 : 120両) |
![]() |
401形はICE-1用機関車として、60編成用に120両が製造された。デザインは空気力学上最適な曲線なものになっている。通常、401形は0番台車と500番台車が編成の両端に連結されており、これら2両のナンバーの下二桁は一致しているのが原則である。例えば、一方の先頭車が401
074なら、もう一方の先頭車は401 574となっている。ただ、編成組み替えによって一部例外が生じているほか、96年から98年にかけては、両端にICE2用の機関車である402型が連結されている例も見られた。なお、エシェデ事故により、401
051/551の2両は予備車扱いとなった。 401形の軸配置がBo-Bo、質量80.4t(最初の40両。残りの80両は78t。)、全長20.56m、幅3.07m、高さ3.84m、動輪径1,040mmである。ドイツの電気方式は交流15kV、16・2/3Hzで、401形もこれに対応している。ICE-1の最高運転速度は280km/hであるが、性能的には中間車14両で、5パーミルの勾配を310km/hで走行することが可能である。起動から3分20秒/6850mで200km/h、6分20秒/18350mで250km/hに達する。 401形の駆動装置はVVVF制御の三相交流誘導電動機駆動をであり、1,200kWの電動機を4台搭載、連続定格出力は4,800kWを誇る。なお、最初の40両のインバータには逆導通サイリスタが採用され、また油冷冷却装置が用いられたが、残りの80両では沸騰冷却式のGTOサイリスタに変更され、約2t軽量化された。ブレーキは回生機能のある高能率の電気ブレーキで、車軸1軸につき2枚のブレーキディスクを持つ。 また、401形は徹底したハイテク化が計られている。運転室はデザイン的にも人間工学的にも優れているが、最大の自慢は走行中に機器の状態をチェックできるモニター装置と、故障を検知し通報する複合自己診断システムであり、特に後者によって、工場への入場前に故障報告を工場に送っておくことで、工場での作業時間を減らすことが可能になった。パンタグラフは、当初、押し上げ力120NでシングルアームのDSA350型が搭載されていたが、現在は空気力学的により優れた、DSA350SEK型が搭載されている。 ICEはバーゼルからスイス国内に直通し、チューリッヒやインターラーケンまで足を伸ばしているが、この直通運転に対応するため、38両の401形に、スイスの信号システムに対応するための機器と、シューが小振りのスイス国内用パンタグラフが搭載されている。 |
ICE-1用として、4形式の中間制御車が製作された。各車両とも寸法は、全長26.4m、幅3.02m、高さ3.84m(食堂車804形のみ4.06m)。車体はアルミニウムの一体成形構造、窓ガラスは連窓構造でハーフミラーに近い。各車ともダブルディスクブレーキを備えており、またレール渦電流ブレーキを非常用にもっている。空調は天井のファンと床暖房からなる。車内の通路幅は1,100mと広いため、車両間の移動は非常に快適であり、またデッキと客室との間の仕切りはガラスドアであるため、各車両内の印象は非常に明るい。 |
801形 (001-098 / 401-440 / 801-860 : 198両) |
![]() |
801形は、通常は1等車として使用されているが2等車不足のため、一部2等車として使用されている車両もある。 車内は開放区画と、5人用コンパートメント3室に分けられている。開放区画の座席は2+1配置で、固定テーブル付き向かい合わせ配列の固定シート17席、引き出し式テーブル付きの回転式シート16席が配されており、コンパートメントと合わせて、801形の定員は48名である。各車両とも乗車口近くにデポジット式のロッカーとトイレ、車両中央にクロークを備えており、またデッキ部には、各種情報を見られるほかホテル・レンタカーの予約が可能な車上情報サービス装置(FIS)の端末が設置されている。通常は動力車の直後に800番台車が連結され、この車両が喫煙席になっており、その他の車両は禁煙席である。800番台車のみは、回転式シートの16席について液晶テレビが設置され、映画などを楽しむことが可能なほか、電話室も設置されている。 1997年には900番台車、801 901が登場した。この車両はICE-2用客車を基本にICE-1に対応するよう設計された車両で、座席の厚さが薄くなり、定員が54名に増加した。最大の特徴は、内装を1等・2等双方の仕様に変更できることであった。当初は1等車として使用されたため801形900番台に分類されたが、現在は車内は2等車仕様となっており、802形900番台にに編入されている。 |
802形 (001-098 / 301-458 / 601-660 / 801-860 / 901-926 : 402両) |
![]() |
![]() |
802形は全車が2等車として使用されている。801形と同様、車内は開放区画とコンパートメントに分かれているが、開放区画の座席は2+2配列であり、固定テーブル付き向かい合わせ配列の固定シート24席、引き出し式テーブル付きの回転式シート20席が配されている。コンパートメントは6人用が4室設けられ、開放区画と合わせて、1両の定員は66名である。車上情報サービス装置(FIS)の端末やトイレなど、このほかの設備は801形とほぼ同様であり、先頭動力車の直後に連結される800番台車回転式シート20席には、液晶テレビも設置されている。 ICE-2用の客車がベースの802形900番台も製作され、定員は73名に増加した。 |
803形 (001-060 : 60両) |
![]() |
804形食堂車と802形2等車の間に連結されているのが、サービス・カー803形である。803形は、一般開放客室(座席は2+2配列、固定テーブル付き向かい合わせ配列の固定シート22席、引き出し式テーブル付きの回転式シート17席、座席定員39名。)の他、車椅子用スペース、会議室、車掌室、電話室、車内販売室、身障者用トイレ、さらに車上情報サービス装置(FIS)のコントロールセンターが設置されている。 |
804形 (001-060 : 60両) |
![]() |
801形1等車と803形サービス・カーの間に連結されているのが、食堂車804である。804形は天井が高く、天窓が設けられたため、車内は広々としている上、非常に明るい。 この食堂車は「ボルト・レストラン」と呼ばれており、中央の厨房を境に、レストランとビストロに分かれている。レストランは24席で本格的な食事が取れる。ビストロの方は16席で気軽に飲物・軽食を楽しむ人の他、テイクアウトの人も利用している。 |
ICE-1の編成 |
ICE-1は、編成によって組成が少しずつ異なり、車両が組替えられることも多い。 |
401.0 - 802.8 - 802.6- (802.0 or 802.3 or 802.9) X 5 - 803 - 804 - (801.0 or 801.4 X2) - 801.8 - 401.5 |
![]() |
デモンストレーション走行 |
韓国やアメリカ合衆国は高速鉄道の建設にあたり、ICEの導入も考えた。新幹線やTGVとの受注競争の中で、この両国にはICEの実車が展示された。特にアメリカではデモンストレーションとして、実際に営業運転も行った。 (1)韓国 1991年2月27日から3月9日まで、ソウルで行われたTECHNOGERMA SEOUL `91という展示会期間中に、KOEX(韓国総合展示場)前広場で、401 555と801 017が展示された。その後、韓国はTGVの導入を決定した。. (2)アメリカ合衆国 1993年には8両(401 084/401 584/801 856/802 855/802 657/802 438/803 056/804 051)がアメリカに航送され、各種試験やデモンストレーション走行が行われた後、ニューヨーク―ワシントンD.C.間などで営業運転が行われた。ただ、あまりかも結局ICEを採用しなかった。これらのICEは現在はドイツに戻って、通常の運用に就いている。 |
Pictures of ICE1 |
Back |