DB BR 402 (44編成)
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はじめに

 ICE 2はICE 1をベースにしながらも、軽量化・短編成化が図られた車両である。2編成併結での運転も可能となり、需要に合わせた効率的な運用を実現した。1996年より順次完成し、暫定運用の後、1998年のNBS Berlin-Hannover開業と共に本格的な運用が開始された。現在は、Berlinとルール地方を結ぶ列車や、Hamburg/BremenとMuenchenを結ぶ列車に使用されている。



登場の背景

 1991年の開業以来、ICEは旅客数が順調に増加し、DBの長距離旅客輸送の1/3を担うまでに成長した。インフラ面の整備も進められ、特にBerlin-Hannocer間の高速新線の開業も控え、ICE車両の増備が急務となっていた。
 また、ICE 1は好評をもって迎えられたが、中間客車が最大14両という長編成で、輸送需要の比較的少ない路線への投入は不向きであり、また車両あたりの定員が少ないため経営上非効率である等の欠点も見られた。このため、新型ICE車両の設計は、ICE 1をベースとしながらも短編成化などの変更が行なわれている。



基本仕様

 ICE 1は両端の動力車の間に中間客車を最大14両連結した編成であったが、新型のICE、ICE 2は先頭動力車・中間客車6両・制御客車からなる8両編成となった。先頭車には自動連結器を備え、2編成を併結することも可能となった。併結した場合の列車長は400mとされ、従来の駅や工場設備でも対応できる長さとなっている。
 技術的にはICE 1をベースとしながらも最新の機器が採用されている。最高性能速度は280 km/hと、ICE 1に揃えられている。車体構造も見直され、軽量化とコスト削減を実現している。車内デザインはコンパートメントが廃止されるなど全般的に簡素になっており、車両あたりの定員は増加している。


Duisburg Hbfに停車中



発注

 1993年8月、DBはSiemensとAEGの2社に新型ICE車両を発注した。内訳は先頭動力車・中間客車6両・制御客車からなる8両編成が44編成、予備の動力車が2両、制御客車が1両、ICE 1用の中間客車が26両、合計で動力車46両、客車335両に及んだ。さらに発注変更が可能という前提で13編成、オプションとして60編成が加えられ、総額は16億マルクに達した。なお、13編成分は後にICE 3に変更され、オプションは行使されなかった。



編成

 ICE 2は先頭動力車・1等中間車2両・食堂車・2等中間車3両・2等制御客車の8両編成で、編成長は205.4 m、総重量は412 t (2編成併結の場合、編成長410,720 mm、総重量824 t)である。定員は1等車105名、2等車263名、食堂車23名で、2編成を併結した場合の定員はICE 1に比べ13%増加している。

形式 軸配置 記号 重量 号車 座席配置 喫煙/禁煙
402 Bo'Bo' - 79 t - - -
805.3 2'2' Apm 45 t 27/37 1等52席 禁煙
805.0 2'2' Apm 45 t 26/36 1等53席 喫煙21席 / 禁煙31席
807 2'2' WSm 51 t 25/35 食堂23席 ビストロ: 喫煙 / 食堂: 禁煙
806.0 2'2' BSpm 46 t 24/34 2等63席 禁煙
806.3 2'2' Bpm 46 t 23/33 2等74席 禁煙
806.6 2'2' Bpm 46 t 22/32 2等74席 禁煙
808 2'2' Bpmf 54 t 21/31 2等52席 喫煙


Duesseldorf Hbfに停車中

 ICE 2は"Tz 2xx" (※Tz: Triebfahrzeuge)と整理されており、Tz 201-244の44編成が存在する。xxの分は特に統一されているわけではなく、規則性は見られない。以下に編成例を挙げておく。
 Tz 239編成: 402 039 + 805 317 + 807 006 + 806 023 + 806 325 + 806 607 + 808 039
 各編成にはドイツ国内の都市名が命名され、その市章が402形と808形の側面に描かれている。

 なお、ICE 2は制御客車のみ完成が遅れたため、登場当初は2編成をつなげ制御客車のみを抜いた、以下のような編成で運転されていた。
 402.0 + 805.3 + 805.0 + 807 + 806.0 + 806.3 + 806.6 + 806.6 + 806.3 + 806.0 + 807 + 805.0 + 805.3 + 402.0


都市名表記の例 - Essen



機械・電気関係

● 先頭動力車 (402形)


402 007-9 (Photo by Hisayuki Katsuyama)

 ICE 2の先頭動力車402形は、ICE 1用の401形をベースとしている。全長20,560 mm、高さ3,840 mm、幅3,070 mm、重量78 t、軸重19.5 tと寸法も401形と同じである。
 動力車には定格出力1,200 kWのSiemens製BAZU 7096/4型三相誘導電動機が4基搭載され、編成あたりの出力は4,800 kW、引張力は200 kNに達する。最高速度はICE 1と同じ280 km/hに設定されている。トランスはSiemens/AEG製で、油冷式となっている出力は5,220kVAである。変換器もSiemens/AEG製のものを使用しており、GTOモジュールの冷却は沸騰式となっている。補助電源装置は容量が大きくなり、故障時に備えている。制御装置にはSIBAS 32、集電装置は軽量化されたDSA 350SEKである。
 最大の特徴は2編成を併結する際に用いるScharfenberg連結器である。連結器カバーは運転室からの操作で自働的に開閉し、空気配管・光ファイバを用いた運転士指令用ケーブルやデータパスが自働的に連結される。この連結器の採用により、ヘッドライトと空気取り入れ口の位置が上方に移され、先頭の印象がやや変わっている。

Hannover Hbfで併結するICE 2 (Photo by Munenori Kesamaru)


 先頭動力車には電力回生ブレーキとディスクブレーキが装備されている。電力回生ブレーキによる最大制動力は150 kNである。2編成併結での運転時は両端の動力車の制動が時間的に同期される。先頭動力車のディスクブレーキは非常用で、特に高速域で回生ブレーキが失効した場合に備えている。
 保安装置としてはDBが用いているLZB/Indusi/SiFaのみを搭載している。
 402形はICE 1に使用することも可能であり、実際にEschede事故直後はICE 1に使用された実績がある。402形の2両の予備車は401形の予備車としての役割も持ち、時には401形と402形を両端につなげたICE 1が見られることもある。
 ICE 2は動力車を先頭とする場合は最高速度は280 km/hであるが、制御客車を先頭として走行する場合は風による脱線転覆が懸念されるため最高250 km/hに制限される。


Koeln Hbfに進入する


● 客車

 ICE 2の車体はICE 1と同様、リブのないアルミ合金製で、押し出し成形により製造されている。ただし、側面・屋根・床とも設計は根本的に見直されており、軽量化とコスト削減のため、各車両とも窓中心間距離1,980 mmの画一的な車体となっている。ICE 1では食堂車のみ屋根が高いのが特徴であったが、ICE 2では基本的な車体構造は他の中間客車と同一である。全長は26,400 mm、高さ3,840 mm、幅3,020 mmは制御客車・中間客車とも共通であるが、台車間距離は中間車の19,000 mmに対して制御車は18,100 mmと短い。軸間距離は2,500 mmである。
 客車にはディスクブレーキが搭載されている。ブレーキディスクは各車軸に4枚が付き、空気圧で制輪子が動く。また各車両の1位側の台車には非常用に電磁吸着式ブレーキも装備されている。
 動力台車はICE 1と同じものであるが、客車には空気ばね台車が搭載された。台車の開発にあたっては、AEG、SIG、Waggon-Union、Goerlitz-Dresden-Salzgitter、SGP、Talbotの各社による空気ばね台車をICE 1に搭載して比較検討され、SGP製の台車であるSF 400型が採用された。



塗装

 ICE 2にはICE 1と同じ塗装が施された。すなわち、ライトグレー(RAL 7035)のベースに、赤 Orientrot (RAL 30031)と紫 pastellviolet (RAL 4009)の帯が入ったものである。しかし、ICE 1と同様、2000年よりBerlin-Rummelsburg工場にて塗装変更が開始され、2001年までに全編成で完了した。新しい塗装では、帯が赤 Verkehrsrot (RAL 3020)一色となっている。ICE 1と異なり、先頭部にDBマークが入れられていないのも特徴である。


旧塗装のICE 2 (Photo by Koji Abe)


新塗装のICE 2 (Photo by Hisayuki Katsuyama)



車内設備

 ICE 2は1等車2両、食堂車、2等車4両からなる。ICE 1にあった会議室が廃止されるなどが全般に簡素なつくりになっているが、806.0形には家族用コンパートメントが備えられ、3人用の腰掛の他、遊戯道具も備えられている。
 内装はモジュール化されており、座席配置やサービス機器が簡単に変更できるものとなっている。コンパートメントは廃止され、全てオープン客室となっている。腰掛はICE 1で採用されたものに比べ重量が半分で幅も小さいものが採用され、軽量化が図られている。これらの変更により、ICE 2の一両あたりの定員はICE 1に比べ約13%増している。


1等車室内

2等車室内

BordRestaurant室内

 1等車の腰掛はピンク、2等車の腰掛は緑色に統一された。デッキ部のFIS 旅客情報システムの表示装置にも改良が加えられ、また各席の荷棚には指定の有無と区間を示す電光表示装置が設置されている。
 なお、ICE 1に続き、内装をICE 3やICE-Tと同様に改装する更新工事が予定されている。2010年から2011年にかけて、Nuernberg工場で全編成を対象に行われる予定である。


デッキ部分より


家族用コンパートメント入り口


2等車腰掛

2等車内 雑誌置場・ゴミ箱



車両各論

● 805.3 (27/37号車)

 1等車。座席配置は1+2列で、定員は52名。21席は喫煙スペース、31席は禁煙スペースとされ、透明な仕切りが設置された。テーブルを挟んで向かい合わせとなる席が、喫煙・禁煙スペースに各々6席あった。現在は全車禁煙である。車端部にはトイレが2基設置されている。

805 302-7 (Photo by Hsayuki Katsuyama)


● 805.0 (26/36号車)

 1等禁煙車。座席配置は1+2列で、定員は53名。1人列に対面式のテーブル席が8席、2人列にテーブル席が12席ある。一方向きの席ではビデオ・プログラムが楽しめる。車端部にはトイレが2基設置されている。

805 012-2 (Photo by Hsayuki Katsuyama)


● 807 (25/35号車)

 食堂車"BordRestaurant"。真中の厨房で食堂部分とビストロに分けられ、ビストロは立席、食堂は4人用テーブルと2人用テーブルが4つずつ用意されている。定員は23名。ビストロの車端部寄りには旅客案内用窓口と身障者用トイレが設置されている。

807 018-7 (Photo by Hsayuki Katsuyama)


● 806.0 (24/34号車)

 2等禁煙車。座席配置は2+2列で、定員は74名。4人用テーブル席が1つ、3人用テーブル席が3つあり、クローゼットが2箇所用意されている。車端部には家族用コンパートメントと、2基のトイレが設置されている。

806 018-8 (Photo by Hsayuki Katsuyama)


● 806.3 (25/35号車) / 806.6 (26/36号車)

 2等禁煙車。座席配置は2+2列で、定員は74名。4人用テーブル席が2つ、3人用テーブル席が4つあり、クローゼットが2箇所用意されている。車端部にはトイレが2基設置されている。

806 318-2 (Photo by Hsayuki Katsuyama)



806 644-1 (Photo by Hsayuki Katsuyama)


● 808 (21/31号車)

 2等車以前は喫煙車であったが現在は全車禁煙である。運転席後部は機械室となっており、前部を展望することは出来ない。座席配置は2+2列で、定員は52名。4人用テーブル席が3つ、3人用テーブル席が1つあり、クローゼットが1箇所用意されている。車端部にはトイレが1基設置されている。

808 007-9 (Photo by Hsayuki Katsuyama)



運用

 1995年、最初の402形が登場し、KruppのEssen工場で公開された。以後、先頭動力車と中間客車の納入は順調に進んだが、制御客車のみは完成が遅れたため、1996年9月29日よりICE 2は制御客車を抜き、2編成を連結した姿で、Bremen - Frankfurt/M、Frankfurt/M - Muenchen、Dortmund - Frankfurt/Mの3路線で営業運転に就いた。1997年6月1日からはBerlin - Magdeburg - Hannover - Koelnにも投入された。この時は食堂車の営業は行なわれず、車内販売が行なわれた。
 1997年6月には最初の制御客車が完成し、年末までに全車が出揃ったのを受け、1998年5月24日からの夏ダイヤで、本来の8両編成で正式な営業運転が開始された。最初に投入されたのはLine 10 Berlin - Duesseldorf / Koelnを結ぶ路線で、Berlin - Hammは2編成併結し、Hammで分割して1編成はDuesseldorfへ、1編成はKoelnへ向かうダイヤが組まれた。9月27日にはBerlin - Hannover間高速新線が開業し、スピードアップが図られている。また、2004年6月13日よりBerlin - Hamm - Duesseldorfの列車は更にKoeln/Bonn Flughafenに延長された。
 1999年5月30日には、Line 4 (現在のLine 25) Hamburg / Bremen - Hannover - Muenchenに投入された。Bremen発着の列車とHamburg発着の列車はHannoverで連解結を行なうダイヤが組まれた。この路線は2000年11月5日より一旦ICE 3に置き換えられたが、NBS Koeln - Rhein/Mainの開業に伴い、2002年12月15日よりICE 2による運行に戻されている。
 2001年4月には、Line 7A Hamburg - Berlinの4往復の列車にも投入されたが、翌年の6月10日よりLine 8 Hamburg - Berlin - Muenchenとなり、ICE-Tに置き換えられた。2003年12月14日には、Line 21 Bremen / Hamburg - Hannover - Frankfurt/Mが新設され、ICE 2による運行とされた。

 ICE 2は現在は全車がDB Fernverkehrに所属し、Bw Berlin-Rummelsburgに集中配置されている。ICE 2が投入されている路線は、以下の通りである。

○ ICE Linie 10 (Berlin - Hammは併結)
Berlin - Hannover - Hamm - Essen - Duessldorf - Koeln/Bonn Flughafen
Berlin - Hannover - Hamm - Wuppertal - Koeln (- Bonn)

○ ICE Linie 21
(Oldenburg -) - Bremen / Hamburg - Hannover - Frankfurt/M (- Saarbruecken)

○ ICE Linie 25 (Hannover - Muenchenは併結)
Hamburg / Bremen - Hannover - Wuerzburg - (Ansbach) - Nuernberg - Muenchen

○ ICE Linie 82
Frankfurt - Mannheim - Kaiserslautern - Saarbruecken

 国際運用はなく、ドイツ国内に限定されている。また、ICE 2を使用しているICE-SprinterはICE 1035 (Koeln Hbf - Hamburg-Altona)、ICE 1071 (Hamburg-Altona - Saarbruecken Hbf)、ICE 1090 (Muenchen Hbf - Berlin Ostbf)、ICE 1091 (Berlin Ostbf - Muenchen Hbf)、ICE 1092 (Karlsruhe Hbf - Berlin Ostbf)、ICE 1093 (Berlin Ostbf - Stuttgart Hbf)の6列車である。

 なお、1998年5月には台湾高速鉄道の受注をPRする活動の一貫として、402 042-6/046-7の2両にTGV Duplexの中間客車8両を連結した特別列車が運転され、最高318 km/hを達成した。402形2両はTGV客車に合わせた特別塗装であった。しかし、台湾高速鉄道は日本が受注し、このPRは実らなかった。


Berlin - Wolfsburgで250 km/hを示すICE 2



諸元表


形式 402形
製造数 44編成
製造初年 1996-98年
編成長 205.4 m
車体長(先頭車) 20,560 mm
車体長(中間車) 26,400 mm
編成重量 412 t
最高速度 280 km/h
最大出力 4,800kN
牽引力(起動時) 200kN
電源方式 15kV / 16 2/3Hz
定員 386席

(参考)
・Deutsche Bahn AG http://www.bahn.de
・ICE High-tech on rails, Wolfram O. Martinsen, Theo Rahn, Hestra-Verlag, 1996
・ICE Geschichte・Technik・Typen, Wilfried Walter, GeraMond Verlag, 2001
・ICE - InterCityExpress, Michael Krische, 2004, GeraMond Verlag. 2004
・DB-Triebfahrzeug-Lexion 2001, EK-Verlag, 2001
・DB-Lokomotiven und Triebwagen Stand: 1. Juli 2001, EK-Verlag
・Fahrzeug-Katalog 2001 Akutuall: Alle Tribfahrzeuge der DB, GeraNova Zeitschriftenverlag, 2001
・Die ICE-Story, Konrad Koschinski, Eisenbahn Journal, 2005
・Bahn-Jahrbuch 2005, Bahn Extra, GeraMond Verlag, 2005
・The European Railway Server http://mercurio.iet.unipi.it/
・Lok-Report http://www.lok-report.de/
・ICE-Fanpage http://www.ice-fanpage.de/
・The ICE/ICT Pages http://mercurio.iet.unipi.it/ice/ice.html
・ICE-Networld http://www.ice-networld.de/
・ICE-Fansite http://www.ice-fansite.de/
・ICE-Page http://www.ice-page.de/
・Peter Schokkenbroek's Homepage http://home.hetnet.nl/~pschokk/
・Homepage ueber die schnellsten Zuege der Welt http://www.hochgeschwindigkeitszuege.com/
・鉄道ファン 10/1995, 交友社



Last Update: 23.09.2008
Text by Hisayuki Katsuyama (ny8h-ky@asahi-net.or.jp)