DB BR 420 (480編成)
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 420形はドイツ連邦鉄道Deutsche Bundesbahnが大都市のS-Bahn向けに、1969年から1997年の長期にわたり、480編成を製作した電車である。3両編成で、需要に応じて併結することで柔軟な運用に対応でき、旧西ドイツ圏の都市交通で長らく中心的な役割を果たして来た。現在は423形などの後継車の登場でその数を減らしているものの、Frankfurt、Stuttgart、ルール地方でS-Bahnに活躍を続けている。


総論

 1972年のミュンヘン・オリンピックに合わせ、DBはMuenchenをはじめ、Frankfurt、Stuttgart、さらにDuesseldorf・Koeln・Essenなどを結ぶNordrhein-Westfalen地域に新しい近郊輸送システムを構築することとし、その担い手として420形を開発した。420形は3両編成の電車で、形式は420.0 (A-Wagen) + 421.0 (Mittelwagen) + 420.5 (B-Wagen)である。最初に1969年12月から1972年にかけて3編成の先行量産車が完成し、各種の試験から良好な結果が得られたため、本格的な量産が開始された。以後、量産は1997年まで8次に渡り行なわれ、最終的に480編成が製造された。(詳細下表) 製造に関わったメーカーも多く、電気部品はAEG、BBC、SSW、機械部品はMAN、WMD、LHB、MBB、O&K、Uerdingen、Waggon-Unionの各社であった。
 420形は現在もS-Bahn Stuttgart、S-Bahn Frankfurt/Rhein-Main、S-Bahn Rhein-Ruhrの3地区で、約200編成が活躍している。一部の車両には更新工事も行われており、当面は元気な姿が見られそうである。


オリジナル塗装の420形

量産 製造年 車番 編成数
量産先行車 1969-70 420 001 - 420 003 3
1次車 1970-72 420 004 - 420 120 117
2次車 1972-75 420 121 - 420 200 80
3次車 1976-78 420 201 - 420 260 60
4次車 1979-79 420 261 - 420 324 64
5次車 1979-80 420 325 - 420 370 46
6次車 1980-81 420 371 - 420 390 20
7次車 1989-93 420 400 - 420 430 31
8次車 1993-97 420 431 - 420 489 59


機械関係

 420形は3両編成の電車で、軸配置はBo'Bo'+Bo'Bo'+Bo'Bo'と全軸駆動である。1軸あたり一台ずつ、出力200kWの主電動機が搭載され、編成での総出力は2400kWである。駆動装置は吊り掛け式で、最高120km/hである。起動加速度1.0m/s2、60km/hからの加速度は0.9m/s2で、最高速には起動から40秒で到達する。パンタグラフはSBS67またはSS25型シングルアームパンタグラフで、中間車421形に搭載されている。6次車までは2基装備されていたが、運用時は1基のみの使用であり、7次車・8次車については最初から1基のみの搭載となった。6次車までの車両についても、1基は順次撤去されている。ブレーキは電気ブレーキを基本としているが、補助的に空気ブレーキも60km/h以下での低速域では補助的に働き、通常0.9m/s2、緊急時0.95m/s2の減速度を実現している。7・8次車では圧縮空気を利用するディスクブレーキが追加された。保安装置はSIFA、INDUSI、PZBに対応しているが、1次車・2次車でMuenchenに投入された編成に限ってLZBにも対応した。
 車体は先頭車が全長23,300mm、中間車が20,800mm、編成全長は67,400mm、軸距は先頭車16,500mm、中間車14,000mmである。中間車はアルミ製、先頭車は登場当初は鋼鉄製であったが、420 131より先頭車もアルミ製となり、編成重量は当初の138tから129tへと軽量化が図られた。最大軸重は16tである。各車両には貫通扉はなく通り抜け出来ない構造である。先頭にはScharfenberg連結器を装備し、最大4編成での併結運転も可能である。
 塗装は登場当初はライトグレーをベースに窓周りに帯が入ったものとされ、帯色は420 001はオレンジ、420 002はブルー、420 003は朱色であった。当初はオレンジはルール地方向け、ブルーはMuenchen向け、朱色はFrankfurt向けとされる予定であったが、Muenchen向け車両を除きオレンジ色が標準塗装となり、後にMuenchen向け車両の多くもブルーからオレンジ色に変更された。DBのCIに従う形で、一部の車両は窓周りのオレンジ色の下に細い黄色の帯が入った塗装となったが、塗装変更があまり進まなかった。また、Muenchen用の車両の一部はMuenchen空港開港時に、水色に「M」の文字が大きく入った広告塗装となった。その他にも数種の広告塗装が登場した。現在は420形はDB Regioの標準塗装であるVerkehrsrotに統一されている。ただし、唯一の例外として、保存車に指定されている420 001はオリジナルのライトグレー/オレンジの塗装をまとっている。


420 674-4


421 174-4

420 174-5


客室

 420形は車両間に貫通扉がないため、通り抜けが出来ない構造である。冷房装置はなく、客室内天井は照明のみのシンプルなデザインである。各車両には片側4扉が設置され、6次車までは側面扉は引き戸であったが、7・8次車はプラグドアが採用された。床高さは96cmである。座席はシンプルな構造のボックスシートが並び、座席定員は先頭車は65名、中間車は66名、編成あたり194名である。先頭車は2等車、中間車は1等・2等合造車で、2次車までは中間車は33席が1等、33席が2等とされたが、3次車以降は旅客需要を考慮して1等17席、2等49席に変更された。ただし、S-Bahn Muenchenは混雑が激しかったため、1等車は廃止され、2等車のみの設定となっていた。



更新工事

 2006年4月、S-Bahn Stuttgart向けの420形7次車2編成(420 400 / 420 416)に対し、更新工事が行われた。これらの車両は"ET 420PLUS"と呼ばれている。この更新工事の主な改造内容としては、正面・側面行先表示の字幕式からLCDへの変更、ヘッドライト・テールライトのLED化、空調装置が追加、側面窓の一枚固定窓化、客室扉の変更などが挙げられる。また、一部の座席は車椅子に対応するため、折り畳み式となった。車内には次駅や時間を表示するLCD式案内表示器が追加され、シートモケットが青色となり、壁材もライトグレーとなるなど、全体的に423形に近い仕様となった。外観上は屋根上の空調装置により、従来の420形と容易に区別することが出来る。これらの工事により420 400編成はET 420PLUSは現在は2編成のみであるが、今後も工事が継続されるものと予想されている。
 この他にも、StuttgartやFrankfurtに配置された車両の中には、内装の一部変更、ヘッドライト・テールライトのLED化、行先表示装置のLED化などの改造を受けた車両が存在する。


運用

 420形は最初にMuenchenに配置され、その直後にはルール地方向けにKoeln、Duesseldorfへの配置も開始された。特にオリンピック開催を控えたMuenchenについては、1972年5月28日全長360kmに渡るS-Bahnの大ネットワークが形成され、その担い手として420形が大量に配置された。1976年からはS-Bahn Frankfurt Rhein-Main向けにFrankfurtへの配置が開始、続いて1978年にはS-Bahn Stuttgart向けにPlochingenへの配置も開始された。一方で、1979年からは新開発されたS-Bahn用客車X-Wagenと111形による客車編成がS-Bahn Rhein-Ruhrに投入され、1984年までに420形は他地区へ転出した。
 Muenchen、Frankfurt、Stuttgart近郊で活躍を続けた420形に転機をもたらしたのは、1999年から導入が開始された後継車423形である。423形はPlochingen、Muenchen、Frankfurt、Koeln、Duesseldorfに計462編成が投入され、420形を置き換えた。経年車の多かったMuenchenでは2004年までに423形への置き換えが終了し、2004年12月を以って「オリンピック電車」420形の運用は終了した。
 ルール地方ではX-Wagenと組む電機が111形から143形に変更され、さらのKoeln・Duessseldorfなど南側では423形が配置されていたが、2004年初頭から車両不足を補うため、久々に420形が使用されることとなった。まず、423形投入で余剰となった編成がPlochingenからEssenに転属し、これにMuenchen、Frankfurtからの転属車が続いた。
 420形は現在も200編成程度が活躍しており、以下の路線で使用されている。

<S-Bahn Stuttgart>
●S2: Filderstadt - Schwabstrase - Stuttgart Hbf - Schorndorf
●S4: Schwabstrase - Stuttgart Hbf - Marbach
●S5: Schwabstrase - Stuttgart Hbf - Bietigheim
●S6: Schwabstrase - Stuttgart Hbf - Weil der Stadt

<S-Bahn Frankfurt Rhein-Main>
●S3: Bad Soden - Eschborn - Frankfurt Hbf - Langen - Darmstadt Hbf
●S7: Frankfurt Hbf - Riedstadt Goddelau
●S8: Wiesbaden Hbf - Mainz Hbf - Frankfurt Flughafen - Frankfurt Hbf - Hanau
●S9: Wiesbaden Hbf - Mainz Kastel - Frankfurt Flughafen - Frankfurt Hbf - Hanau

<S-Bahn Rhein/Ruhr>
●S7: Solingen Hbf - Hilden - Dusseldorf Hbf - Dusseldorf Flughafen
●S9: Wuppertal - Langenberg - Essen - Bottrop - Haltern am See

 現存する420形200編成の大半は3次車以降の車両が中心である。その中でもEssenに配置されている車両には経年車が多い。2008年4月から2010年にかけて新型電車422形が84編成がS-Bahn Rhein-Ruhr向けに導入され、143形+X-Wagenの客車編成と共に420形も全て置き換えられる予定である。
 しかし、S-Bahn Frankfurt Rhein-Main、S-Bahn Stuttgartについては423形に混じって420形も活躍を続ける予定であり、Frankfurtでは2014年頃、7・8次車が集中的に配置されているStuttgartでは2025年頃まで使用される計画で、当面は元気な姿が見られそうである。

 なお、Muenchenで廃車になった車両の一部はスウェーデンに渡った。Stockhokm周辺の近郊輸送の一部をDB Regioの子会社であるAB Storstockholms Lokaltrafikが運行することになり、濃紺に塗り替えられた420形が投入されたが、2005年12月でこの運用は終了した。
 420 001は保存車に指定され、シルバーグレー/オレンジ色をまとい、Muenchenを拠点に臨時列車に使用されている。また、420 002のA-WagenはMuenchenのドイツ博物館で保存されている。

Essen Hbfに停車中の420形


諸元表

形式 420形
製造メーカー MAN、WMD、LHB、MBB、O&K、Uerdingen、Waggon-Union
製造年 1969-1997
製造数 480編成
最高速度 120 km/h
全長 67,400 mm
座席数 194席
軸配置 Bo'Bo'+Bo'Bo'+Bo'Bo'


Last Update: 16.03.2008
Photo by Yasuhiro Sakurai, Hisayuki Katsuyama
Text by Hisayuki Katsuyama (ny8h-ky@asahi-net.or.jp)