BR 101 (001-145: 145両) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
ドイツの車輌 電気機関車 ICE ディーゼル機関車 蒸気機関車 電車 気動車/蓄電池車 客車 貨車 事業用車 |
![]() |
|||||||||||||||||||||||||||||||
はじめに |
||||||||||||||||||||||||||||||||
101形はAdtraz製の高速機関車で、1997年から1999年までに145両が製作された。103形の後継機に位置付けられ、出力6,400kW、最高速度220km/hという高性能を誇る。現在は主としてEC/ICに使用されており、ドイツ全土の電化区間で活躍している。また数多くの広告機が登場し、塗装のバリエーションも多いのも特徴である。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
登場まで |
||||||||||||||||||||||||||||||||
1970年代以降、200km/h運転を行うICの牽引には103形が用いられてきた。しかし、1990年代に入ると103形も老朽化が目立つようになり、環境対策や保守・検査の合理化の要求という点からも、新しい高速旅客列車用の機関車の必要性が高まった。1988年からは最高速度200km/hの性能を有し、高速旅客列車から貨物列車まで幅広い用途に使用できる凡用機として120形の量産が開始されたが、製造コストが高い割には高速旅客列車用としても貨物列車用としても性能が中途半端であり、トラブルが続出したこともあって、60両で量産は打ち切られた。1991年末には出力6,000kW、最高速度200km/hの新型機関車「121形」の開発も検討されたが、DRとの統合・民営化を控えていたこともあり、この計画は凍結され、新型機関車の登場は民営化後に持ち越されることとなった。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
発注・製作 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
高速旅客列車用電気機関車の発注について、最初に旧西ドイツ国鉄DBよりメーカー側へ照会があったのは1993年12月8日である。1994年1月1日にDBとDRが統合・民営化されDBAGが発足、その年の12月29日にはメーカー側と機関車発注の契約が交わされ、新型電気機関車101形の製造が決定した。正式発注は1995年7月28日で、101形145両が製造されることとなった。1両当りの価格は560万DMで、製造はABB-Henschelが受注した。なお、DBはこれとほぼ同時に、AEG/Henschel連合に145形を、Siemensに152形を発注しており、一度に計400両にもおよぶ機関車を発注したことになる。ABB-Henschelは1996年にAEGと合流してAdtrazとなったため、101形はAdtraz製ということになる。このAdtrazも、2000年にはBombardierに吸収された。 101形の部品の製造は1995年12月に開始され、1996年1月からはAdtranzのKassel工場にて車体の組立作業も開始された。101形の製造に関わった工場は多く、主なところでも、車体と台枠はAdtranz Wroclaw (Breslau)工場、変圧器はABB Halle工場、主電動機はABB Wien工場、台車はAdtranz Siegen工場、パンタグラフはAdtranz Hennigsdorf工場、制御装置はAdtranz Mannheim工場が担当した。ABB-Henschel/Adtranz以外でも、Siemensが信号装置(Indusi, LZB)を、Behrがクーラーを、Knorr Bremse Muenchenが空気圧縮機をそれぞれ担当するなど、101形の製造に関わったメーカーは多い。製造番号は101 001-144までは順番に33111-33254が割り当てられたが、101 145は記念すべき33333号機に指定され、それを記念する特別塗装も施された。 1996年7月1日には早くも1号機となる101 001が落成した。101形の公開は7月1日にAdtraz Kassel工場で行われたが、その際には特別に作曲された"Musik zur Lok"が演奏されるなど、派手な演出がなされた。その後、101 001-003の3両を用いて試運転が開始され、97年2月18日にはEBAから101形の営業運転の認可が下りた。翌日からは定期列車への運用が開始された。 101形の量産は鋭意進められ、98年7月24日には100号機が落成、1999年5月末には最終の145号機も完成した。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
機械・電気関係部分 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
ドイツでは誘導電動機を駆動用に用いた機関車の開発が進められてきた。1979年に登場した120形の試作機5両は誘導電動機を採用した初の本線用機関車であり、最高160km/hの高速旅客列車から重貨物列車まで幅広い用途に用いることを目標に開発された。120形試作機は各種試験のため機関車ごとに細かく仕様が分けられているが、中でも120
004はGTOインバータ制御やディスクブレーキを採用した点や、冷媒にエステルを用いている点で、101形との共通点が多い。120.0形の技術は、127形
"Euro-Sprinter" (Siemns/Krauss-Maffei製)や128形 "12X"
(AEG製)といった試験機に引き継がれ、さらに101形/145形/152形等の新型量産機の開発につながっていくこととなった 101形の車体はアルミ製で、側板が強度部材の一部をなす構造となっている。全長は103形よりやや短い19,100mm、全幅2,950mmである。前面鋼板の厚さは高速走行時の風圧の影響を考慮して8mmとされている。軸配置は103形のCo'Co7からBo'Bo'となったが、軸重は21tに抑えられている。軸距は2,650mm、台車中心間距離は10,950mm、動輪径は1,250mm(最小径 1,170mm)である。駆動装置は220km/hの高速走行に対応するため、一体型中空軸カルダン駆動(1:3.95)が採用されている。 制動装置はKE-GPR-E mZで、回生ブレーキとディスクブレーキを搭載しており、通常は回生ブレーキが用いられる。制動力は150kN、定格出力は6,600kWである。制動方式はR+E 160・R+E・P+E・R・P・Gの6種類に対応しているおり、また駐車ブレーキも設けられている。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() 101形の台車 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
電動機は定格出力1,632kW(最大出力1,683kW)、重量2,186kgの三相誘導電動機が4基搭載されており、機関車1両での定格出力は6,400kWに達する。103形の7,500kWにはやや劣るが、起動時牽引力は300kN(103形は312kN)、95km/h走行時で250kN、220km/h走行時で104kNが確保されている。乗務員の間では高速走行時の牽引力の高さが特に評価されており、高速新線の勾配区間などで威力を発揮している。変圧器(重量13,100kg)は環境への悪影響が少ないエステル樹脂冷媒(重量2,100kg)による液冷式(樹脂は強制空冷)が採用されている。容量は7,600kVAで電動機や補機電源装置などをカバーしている。 制御装置にはMicas Sが採用された。使用素子はGTO-SCR、ゲート制御装置は16bitである。補助電源装置は3基搭載されており、1基が電動機4基を、もう1基が変圧器と変換器冷却器を、最後の1基がその他の装置を担当している。集電装置としては、ICE 2用に開発されたDornier社製のDSA 350 SEKが2基搭載されている。 保安装置としては、全機がLZB80とCIR-ELKEを搭載しており、CIR-ELKEが導入されているOffenburg-Baselへの入線も可能である。また101 141-144の4両はETCS Level 2も搭載しており、Jueterbog-Bitterfeld間で行われたETCS Level 2を用いた200km/h走行試験に使用された。 103形は推進運転に対応できないことが問題とされていたが、101形では推進運転制御に対応するZWSが搭載されている。また、重連総括制御については四重連や中間補機・後部補機制御に対応するZMSが採用されている。101 124, 126, 130-131の4両は”Metropolitan”客車の牽引に充当できるようWTBに対応している。 また、101形では、ICE 1で確立された自己診断システムが採用されており、工場での保守作業が大幅に軽減されている。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() ICを推進する101 054 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
デザイン |
||||||||||||||||||||||||||||||||
101形のデザインはStuttgartのBPR-DesignとABB-Henschelが共同で行った。145形や152形に似ているが、高速機ということで、これらの機関車に比べ後退角が大きく取られている。103形に比べ角張った印象があるが、これは向かい風を出来るだけ機関車の上下方向に流し、横方向への空気の流れを減らして対向列車などへの影響を小さくするよう配慮されたためである。このような空力的な要求されたため、デザイン面での制約が多く、担当デザイナーにとっては必ずしも満足の出来るデザインとはならなかったようである。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
塗装 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
塗装は、デザインの段階ではシルバーを基本に側面の両端を赤に塗り分けたABB-Henschelの案が好評であったが、この塗装は前方からの視認性に問題があるため、却下された。結局、採用されたのは赤を基本に側面下部をグレーとし、正面中央部に白帯が入ったものである。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
SBBのRe460と同様、101形には多くの広告塗装が登場している。広告塗装は特殊シートに印刷され、それを車体に貼り付けることで行うため、両端の屋根やライト周りなどには地の赤色が残る。なお、広告には1年間で51.000 Euroを要する。101形の広告塗装のバリエーションは数多い。下にその一部を示す。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||
運用 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
101形は完成とともに、ICE 1を担当するBw Hamburg Eidelstadtに配置された。101形の定期列車への運用は1997年2月に開始されたが、本格的な定期運用が用意されたのは1997年夏ダイヤからで、最初は10日周期の運用が組まれた。秋からは21日周期の運用となり、1両当りの1日平均の走行距離は1455
kmに達した。その後も103形に代わって運用が増えていき、1998/99年冬ダイヤでは、5つの運用(2つの23日周期の運用と、19日周期、18日周期、13日周期の運用)が組まれた。1999年夏には101形全機が出揃い、2002年夏ダイヤでは8つの運用で合計128日周期となった。 登場以来、101形は高速性能を活かして最高200km/hのEC/ICを中心に運用されており、運用範囲はドイツ全土に及ぶ他、オーストリアのWien・Salzburgへの運用も存在する。Stuttgart Hbf、Frankfurt (M) Hbf、München Hbfなどの頭端式の駅の通る列車では、折り返し時間短縮のため制御客車(Bpmbdzf 297 / Bimdzf269)が連結される編成と組むことも多い。また、登場当初はIRの運用も多かったが、2002年12月15日のダイヤ改正でほぼ廃止された。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() ICを牽引する (Photo by Nanna Go) |
||||||||||||||||||||||||||||||||
1999年8月よりKöln Hbf-Hamburg Hbfを結ぶMetropolitan (MET)の運転が開始された。METには新造された最高220km/h対応の客車が投入され、専用塗装となった101 130-131がMETの牽引に充当された。また、検査時などに備え、Verkehrstor塗装の101 124, 126にもMET客車対応設備が搭載され、実際に何度か代走した実績もある。しかし、METは当初期待されたようには乗客数が伸びず、2004年12月に廃止された。MET客車はICEやICと同様の塗装に変更された上でICEとして運行されることとなり、現在も101 124, 126, 130-131が牽引を担当している。元MET客車を利用したICEの運行区間は何度か変更されているが、2012年12月ダイヤ改正以後はBerlin - Halle/Leipzig - Jena - Münchenで運用される予定である。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() 元MET客車のICを牽引する101 130 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
101形のもう一つの特徴的な運用としては、2006年12月から運行を開始されたMunchen-Nurnbergを結ぶRE "Munchen-Nurnberg-Express"が挙げられる。この列車は両都市を最高200km/hで約2時間で結び、高速新線を経由し、車両も元IC客車が充当されており、DB
Ferverkehr所属の101形が牽引を担当している。 この他、DB Autozugが運行するCNLやAZなどのの運用も存在する。さらに週末を中心に、最高160km/hのParcel-ICをはじめとする貨物列車の運用も存在する。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() CNL 312/NZ 300 (Photo by Nanna Go) |
||||||||||||||||||||||||||||||||
トラブル・事故 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
営業運転開始当初、101形は晴天時にはその高性能ぶりを発揮したが、悪天候時にトラブルが続出した。これに対処するため、ソフトウェアが交換された。また、変圧器にトラブルが続出したため、全機の変圧器が交換された。 2002年秋には台枠に亀裂が発見され、検査の結果31両が一時運用から外れた。また、最近になって一部の機関車のギアボックスにも深刻なトラブルが発見されている。これらはDessau工場で修理されているようである。これらのトラブルは、DBの高速機不足に拍車をかけている状態である。 2000年2月6日深夜0時12分には、Koeln近郊のBruehl駅構内でD 203 "Schweiz Express"が制限速度30km/hのポイントに120km/hで進入し脱線転覆、機関車は民家に突っ込む事故が発生し、9名が死亡する大惨事となった。原因は運転士が速度制限を見落とし減速を怠ったことにあるが、DBの運転士養成体制の不備が遠因とされている。D 203を牽引していた101 092は大破し、運用から外れた。2002年12月に101 092はようやく運用に復帰したが、主要機器は再利用されたものの車体は新製されており、修理には350万DMを要した。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
今後 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
現在、ICに使用されている客車は車齢40年以上の車両が存在するなど老朽化が進んでおり、今後新型電車ICxに順次置き換えられる予定である。しかし、車両数が多いこともあり、2023年頃まではIC客車は使用される予定であり、当面の使用に耐えられるよう、2012年からリニューアル工事も開始されている。したがって、101形は当面はICを中心とする長距離旅客列車に充当されるものと考えられるが、将来的には101形は貨物用に使用されることも計画されている。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
諸元表 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||
(参考) ・Deutsche Bahn AG http://www.bahn.de ・Baureihe 101, Karl-Gerhard Baur, GeraMond Verlag, 2003 ・Baureihe 101, Karl-Gerhard Baur, GeraMond Verlag, 1999 ・BAHN EXTRA "Bahn-Jahrbuch '99" by GeraNova ・BAHN EXTRA Bahn-Jahrbuch '99, GeraNova Zeitschriftenverlag, 1999 ・BAHN EXTRA Bahn-Jahrbuch 2002, GeraNova Zeitschriftenverlag, 2002 ・BAHN EXTRA Bahn-Jahrbuch 2003, GeraNova Zeitschriftenverlag, 2003 ・Eisenbahn Kurier 2/2003 ・Fahrzeug-Katalog 2001 Akutuall: Alle Tribfahrzeuge der DB, GeraNova Zeitschriftenverlag, 2001 ・The European Railway Server http://mercurio.iet.unipi.it/ ・Eisenbahn Kurier http://www.ek-verlag.de/ ・Lok-Report http://www.lok-report.de/ ・DREHSCEIBE http://www.drehscheibe-online.de/ ・Die Werbeloks http://www.werbeloks.de/ ・Wolframs Lokportrait http://www.lokportrait.de/ ・Zuglok.de http://www.zuglok.de/ ・Die Stars der Schiene - Die Baureihe 101, RioGrande-Videothek |
||||||||||||||||||||||||||||||||
Last update: 23.11.2012 Text by Hisayuki Katsuyama |